新しい貸金業法によって債務整理の現状はどう変わった?

新しい貸金業法によって債務整理の現状はどう変わった?

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2018.07.05

貸金業法とはどんな法律?

貸金業者に対する規制の強化とは

貸金業法の改正によって、貸金業者への規制強化が閣議決定されました。その内容は

  • 貸金業者の登録に必要な純資産額を2,000万円にすること。
  • 貸金業務取扱主任者を営業所ごとに設置する

こととなっています。

改正貸金業法とは

最高裁の判決により定められた貸金業法によって、それまでの高い金利が認められなくなりました。この貸金業法によって、弁護士などの法律家へ債務整理を依頼した時点で、各貸金業者から取引履歴を取り寄せますが、利息制限法によって計算をし直さなければなりません。

この貸金業法は、消費者金融などの貸金業者に対して定めた法律で、平成18年12月に国会によって全会一致で可決成立し、平成22年6月18日に施行されました。この新しい貸金業法とは、大まかに「総量規制」、「上限金利の引き下げ」、「貸金業者に対する規制強化」といった3つの項目があります。

この貸金業法によって長期間、貸金業者との取引があった場合に「過払い金」が発生します。この「過払い金」によって負債額を大幅に減らすこともできます。また以前なら自己破産や個人再生といったケースも、任意整理という簡単な債務整理で解決できることも可能になりました。

過払い金を回収することで借金がほとんどなくなったというケースも多くあります。そうした貸金業法によって、債務側では自己破産等の件数が年々減ってきています。一方過払い金返還請求が激増したことで、中小の貸金業者を中心として多くの貸金業者が廃業・倒産に追い込まれることになりました。平成22年には貸金業者最大手の武富士が倒産したことは、この貸金業法の影響が大きかったことは間違いありません。

債務整理と任意整理はどう違うのか

債務整理とは

債務整理とは国が認めた借金解決のための法的手段で、債務を整理して借金を減額することで、債務者の負担を少なくし、新しい生活を踏み出せるように作られました。現在、自己破産や個人再生といった債務整理の手続きは年間約9~10万件行われています。

ですから毎年10万人を超える人が債務整理によって借金の問題を解決しているといえます。債務整理にはいろいろと方法があって、基本的に借金返済を法的に解決する方法では「自己破産」や「個人再生」などがあります。また、法的措置以外にも任意整理・過払い金返還請求などの方法があります。こうした債務整理を実行する状況として

  • 借金を滞納、延滞するようになった
  • 借金の返済のために他社から借金をしてしまう
  • 借金を返せそうにない

といったことがあります。もしこのような状態になったら債務整理を検討する必要があるといえるでしょう。

任意整理とは

任意整理とは債務整理の1つの方法であり、債務者に代わって弁護士や司法書士が債権者と裁判所などの公的機関を通さずに交渉を行う方法です。任意整理により債務者の負担を少なくし生活を破たんさせないように、返済方法を変更してもらうことができます。自己破産よりも利用しやすいうえ、比較的に制限も少ないため、債務整理の中で最も利用される事が多いのが任意整理です。

任意整理のメリットは裁判をしないで解決する事ができるということでしょう。しかし任意整理のデメリットとして、裁判を行っていないこともあり債権者に対しての強制力がありません。ですから大幅な借入金の減額は難しいというケースもあります。また債権者によっては、任意整理に応じないという場合もあります。たとえば任意整理に向いているのは下記のような人です。

  • できるだけ自分の力で借金を完済したい人
  • 住宅ローンを払いながら借金を整理したい人
  • 自分では債務整理ができず専門家に債務整理を依頼したい人

過払い請求とは

過払い金とは、カード会社や消費者金融などの貸金業者に対して、法律的に支払う必要がない金利での返済額であるにもかかわらず、払い過ぎていたお金のことをいいます。一般的に消費者金融のような貸金業者と5年以上取引を続けている人は、過払い金が発生している可能性が大きいといわれています。

債権者側は「利息制限法」という法律に基づきお金を貸さなければなりません。その金利の範囲は15%~20%と決まっています。そしてこれとは別に同じような法律として「出資法」という法律がありますが、この法律では29.2%という上限金利が定められていました。ですから多くの貸金業者ではこの「出資法」の金利に基づいてお金を貸しているケースが多かったのです。

このように「利息制限法」の上限金利と「出資法」の上限金利という別々の法律の上限金利の差を「グレーゾーン金利」と呼ばれています。この「グレーゾーン金利」は貸金業法によって平成18年に改正され、「出資法」の金利の上限も「利息制限法」と同じ20%となりました。ですから貸金業者は、それまでの「グレーゾーン金利」で貸していた返済金額を「過払い金」として返金しなければならなくなりました。

貸金業法の内容とは?

総量規制

総量規制とは、債務者が借りることができる金額の総量に制限を設ける新しい規制です。どんな規制かというと、貸金業者からの借入金額が債務者の年間収入の三分の一を超えた場合、新しく借入ができなくなります。しかしすでに年収の三分の一を超える残高があったとしても、すぐにその超えた金額を返済しなければならないということではありません。

この総量規制が適用されるのは、貸金業者から個人へお金を貸す場合で、銀行からの借入や法人としての借入といった場合は対象外となります。また借入の際には源泉徴収票や給与明細といった年収を証明する書類を提出しなければ借入できないこともあります。

上限金利引き下げ

貸金業法が制定される前は、「出資法」の上限金利と「利息制限法」の上限金利の範囲であればその業務は法的に許容されていました。しかし平成22年6月にできた貸金業法以降では、出資法の上限金利が20%に引き下げられたことで、グレーゾーン金利がなくなりました。

もし「利息制限法」の上限金利を超えた金利で貸した場合、行政処分の対象となります。また「出資法」の上限金利を超える金利で貸付けた場合には刑事罰の対象となります。

過払いバブルとは

平成18年の最高裁判決以降では、多くの多重債務者は過払い金返還請求を貸金業者に対して行ってきました。そのことで多くの貸金業者が廃業に追い込まれた結果となりましたが、最近では過払い請求もピークを過ぎて件数的にも減ってきています。

日本貸金業協会によると、全国の消費者金融などの貸金業者が返還した過払い金の総額は2008年がピークで約1兆円、2012年では約5千億円だったそうです。その間弁護士や司法書士などの法律家が20%という手数料を受取っていましたから、年間1,000~2,000億円の報酬額をもらっていた事になります。

これはかなり効率の良いビジネスだったといえるでしょう。過払い金の返還請求には時効があって、最後に取引をした日から10年以内であれば過払い金が返ってきます。ですから新しい貸金業法ができて10年になることから、弁護士などの法律家にとっての過払い金返還請求は、そろそろ期限が切れるケースも多くなってきました。

ただし平成18年に法律が変ったとはいえ、その後も貸金業者と取引が続いている場合は、まだ過払い金の請求対象になりますから、こうした人達を法律家はターゲットにしているようです。これまでにかなり高率的なビジネスをしてきましたが、今後の法律家たちがどんなビジネスに目を向けていくのか気になるところです。

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